金沢に県内初のモスク 外観 町並みに配慮 石川県

 県内のイスラム教徒でつくる「石川ムスリム協会」などが建設した県内初のモスク(礼拝所)が金沢市に完成した。着工前は、異文化に対する警戒感から地元住民の間に反対の声もあったが、心配された騒音などはなく、歴史都市・金沢の街角に溶け込みつつある。(麻生慎士、三歩一真希)

 モスクは、木造2階建て約200平方メートルで、同市若松町の住宅街に建つ。目立った特徴がない建物はアラビア語の看板がなければ、普通のアパートにしか見えない。地元住民らの要望や建物の外観を制限する市景観条例に配慮したという。

 総工費は約4500万円で、全国のイスラム教徒などから寄付を募った。2012年5月に着工し、建物や駐車場の整備がすべて完了したのは今年4月だ。

 イスラム教の礼拝は、早朝から夜まで1日5回と定められている。イスラム教の聖典「コーラン」を唱え、聖地メッカの方角にひざまずいて額を床に付ける。なじみのない日本人には奇異にも感じられるが、同協会役員の松井誠志さん(40)は「慣れればそうでもない。全てを与えてくれる神に感謝するのに、1日5回だけでいいのだから」と祈りの大切さを強調する。

 日本では、祈りの場所を確保するのは一苦労だという。祈りの前に手や足、顔を洗う必要があるが、公共施設のトイレで足を洗って注意された外国人イスラム教徒もいたという。以前は同協会が中心となって、市内に共同でアパートを借りて礼拝に使用していたが、手狭なため、12年にモスク建設構想が持ち上がった。同年から金沢大大学院に心理学を学びにインドネシアから留学しているロスパティ・マウリナ・ヒダヤティさん(27)は「ここは広くてお祈りするにはすごくいいところ。完成をすごく楽しみにしていたからうれしい」と話した。

 地元では、路上駐車や騒音などを懸念する声があったが、これまでに目立ったトラブルはない。建設構想が持ち上がった当時に町会長だった室井健さん(56)は「外観も町並みに合うように建ててくれ、事前に図面も見せてくれた。自治会の清掃活動にも参加してくれている」と評価し、異文化への理解が浸透しつつあるようだ。松井さんによると、イスラム教徒は金沢市近郊だけで少なくとも150~200人程度おり、留学生の増加に伴って増えているという。

 ◇開所式典で教徒ら喜び 「お祈りできて良かった」

 モスクの開所を記念する式典が16日に行われ、金沢大の留学生ら県内外のイスラム教徒が完成を喜び合った。

 2006年にエジプトから来日し、今月中に帰国する予定のヘトル・モハメドさん(40)はモスクの建設資金を集めるため全国を奔走。式典では「来たばかりの頃は大勢でお祈りできる場所がなく、さみしかった。建設を許してもらえて、日本人ともっと分かり合いたいと思えた」とあいさつした。娘のアラーさん(11)も「こんなに快適なモスクでお祈りができて良かった。ありがとうございました」と感謝していた。

 その後、招待客らはイスラム教の戒律に基づいた方法で処理された鶏肉、牛肉などを使ったハラール食(アラビア語で「許されたもの」の意)を味わい、交流を深めていた。

 松井さんは「ここはイスラム教徒のためにできた施設ではあるが、興味を持った人にもぜひ来てほしい」と話しており、見学もできるという。問い合わせは松井さん(電)090・7086・3480へ。

読売新聞