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イスラム金融、世界で200兆円 東南アが仲介

イスラム教の教義にのっとった「イスラム金融」の市場が急成長している。過去5年で2.5倍に膨らみ、2014年中に全世界で2兆ドル(208兆円)規模となる見通しになった。市場整備を進めるマレーシアなどが中東マネーを世界に仲介している。商品が多様化し、日本を含む非イスラム圏の国や企業が資金調達に利用する例も目立ってきた。

  英国のイスラム金融業界団体「UKIFS」などの調査で明らかになった。従来の融資だけでなく、債券にあたる「スクーク」や「タカフル」と呼ばれる保険など、金融商品・サービスが拡充し、利用が広がった。不動産投資信託(REIT)やドル建てスクークも相次ぎ導入されている。

 世界のイスラム教徒の約2割が暮らす東南アジアの経済成長に伴い、インフラ整備の大型投資案件から中小企業の資金調達まで利用の幅も広がってきた。

 非イスラム圏の国や企業の間でもスクークで資金を調達する動きが出ている。英国は6月、非イスラム圏の国として初めて340億円規模のイスラム金融国債を募集した。

 邦銀も08年の銀行法の施行規則の改正により、子会社を通じてイスラム金融業務を手掛けられるようになった。三菱東京UFJ銀行は邦銀として初めてイスラム債の募集を通じて資金を調達する。三井住友銀行は、マレーシアと英国の2拠点で企業向けにイスラム金融サービスを提供する。

 東南アジアが市場拡大を支えている。イスラム教を国教とするマレーシアでは、政府がイスラム金融を重点産業と位置づけ、免税措置の法整備や取引ルールの構築、専門家の育成を進めている。同国はスクークの発行額では世界最大で、世界のイスラム金融資産の約3割を占める。

 アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ国営エネルギー会社や、クウェートを拠点とする政府系投資会社がマレーシアリンギ建てのスクークを発行した。仏ソシエテ・ジェネラルもリンギ建てスクークの発行を計画する。

 インドネシアやフィリピンもイスラム金融の育成に着手している。フィリピンは年内にも、アルコールや豚肉関連事業などイスラム教義に反する企業を除いた47社で構成する「イスラム株価指数」と、この指数に連動する上場投資信託(ETF)を導入する。

 今後は取引ルールの統一が課題となる。イスラム金融では、教義の解釈の違いから地域によって細かいルールが異なる場合がある。「信仰に関わるため、国際的なルールの統一には時間がかかる」(マレーシアの格付け会社RAM)との見方もある。

日本経済新聞