髪は女の命〜イスラム女性の美容院

2007年に日本に1年間留学した時、私は一度も髪の毛を切りませんでした。正確に言うと切ってもらえる場所がありませんでした。「美しいところを他人に見せない」というイスラムの教え(※第3回「ヘジャブの着用」参照)に従って、ヘジャブ(スカーフ)を着用しているため、男性の目に触れる場所で髪を切るわけにはいかなかったのです。

 女性が髪を大事にするのは世界共通だと思います。私も、女性の髪は「王冠」に等しいと思っており、日本に留学する前は、3カ月に1度は男性の目に触れない「ハラール(イスラム法で合法の意味)美容院」で髪を切っていました。

 しかし、日本には適当な美容院がなかなかありません。男性の従業員がいる店が多く、そうでなくてもガラス張りで外から丸見えの店ばかりです。伸ばしっぱなしになった髪はバサバサになり、ゴリラの毛のような髪質に我慢できなくなりました。

 ある日、散歩中に女性しかいない美容院を見つけました。あまりにもうれしくて、吸い込まれるように店に入りました。「すみませんが、こちらはペットの美容室です」。店内には犬がいました。従業員の言葉に「もう日本でヘアカットを諦めるしかない」と観念しました。

 エジプトに帰国した次の日、朝早く起きて美容院に行き、1年分の髪を切ってもらいました。すっきりした気持ちでした。

 エジプトでは20年ほど前からヘジャブを着用する女性が増え、それに伴って「ヘジャブ専用室」を設置する美容院が出てきました。カーテンなどで仕切られた女性専用の部屋があり、美容師も女性です。

 「ヘジャブ専用室を設けるのは、今では当たり前になりました」。カイロで美容院「ロリー」を経営するタレク・ザキさん(48)はそう話します。ロリーの客の60%はヘジャブを着用しているそうです。「女性はいつでも、美しくありたいものです。女性はいつまでも女性ですから。ヘジャブを着用する女性も、希望する髪形や色は他の女性とほとんど同じです。ストレートパーマをあてたい、あの女優と同じ髪色にしたい、とかね」

 私は高校2年生の時にヘジャブを着用し始めました。その時、友達にこう言われました。「いいな。あなたはもうこれで毎朝ヘアスタイルのことを考えなくていいでしょう」。確かに、毎朝どんな髪形がいいのか考える必要はないかもしれません。でも、太陽や空気に触れないと髪は弱くなるため、以前よりもケアが必要になりました。髪の手入れをきちんとしておかないと、女性ではなくなるように感じています。

毎日新聞

美容室『Solpisca』 恵比寿にある美容室 ハラルシャンプー等使用 プレイヤールームあり