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イギリス:ハラール市場が見せる大きな可能性  

広がりを見せるハラール市場は羊肉業者にとって大きな市場であるだけでなく、牛肉業者にとっても大きな可能性を示すようになってきている。ハラールが市場に与える影響は大きく、特に羊肉においては莫大な利益を生み出すようになってきている。

数字を見てもこれは明らかである。ムスリムはタンパク質源として主に羊肉を好むため、全人口の4.8%をムスリムが占めるイギリスにおいて、市場としての可能性が大きいことは明らかである。

どのような業界においても言えることだが市場をきちんと理解することが大切である。ハラール業界において特に重要なのはイスラム教のカレンダーをきちんと把握して、必要な時期に供給を合わせるよう、生産と物流を手配することが不可欠になってくる。

イギリスにおいて販売される羊肉のおよそ20%はムスリムが消費しており、このためラマダンとイード(犠牲祭)の期間中に消費がピークを迎えることになる。

精肉業者は年間を通じたカレンダーをもとに、生産者ときちんと計画を建てることが必要になるだろう。例えばイスラムの太陰暦において9番目の月に行われるラマダンの期間中、ムスリムは日の出から日の入りまで食べ物を口にすることができない。しかし夜にはお祝いとして人々が集まり食事をすることになるため、需要が増加することになる。イスラム暦は太陰暦のため、毎年10日から11日ほど前後することがある。

今年のラマダンは6月18日に始まったが、来年は6月7日に移動する。市場の需要を最大限に利用するためには事前の計画が重要であることが、このことからもわかるだろう。

同様に、イードのお祝いはラマダン終了からおよそ70日後に行われ、すべてのムスリムは預言者ムハンマドの軌跡をたどることが義務として課され、神への捧げ物として動物を屠殺することが求められる。この捧げ物としての肉は三つの部位に分けられ、一つは購入者、一つは友人や近所の人々、一つは施しものとして消費されるので、更に需要が高まることになる。この期間中には、6ヶ月以上の大人の動物で、健康で引き締まっているものが求められる。

それ以外にも輸出市場が存在する。イギリスはヨーロッパで最大の羊肉生産国であり、輸出国としても最大である。ヨーロッパの総人口のうち2010年には6%を占めているムスリム人口は2030年に8%に増加すると見られている中、イギリス国内で生産される羊肉の35%は輸出に回され、大半はヨーロッパ諸国に出荷されている。1540万人に上ると見られるムスリム消費者を背景に、イギリスはヨーロッパにおいてその需要を獲得できる立ち位置にいると言えるだろう。例えばフランスはイギリスにとって最大の羊肉輸出市場であり、ムスリム人口も多いため市場としての可能性も良好である。

事実、フランスでは多くのスーパーマーケットがハラール製品のみを揃えた棚を用意している。市場へのアクセスや海外での認知度を考えてみると、イギリスは海外でもハラール製品の需要をつかめる絶好の位置にいるといえるだろう。

今後の展望は明るいと言える。公の理解が進んでいないため誤解を受けることもあるのだが、市場としては貴重な可能性を示している。市場の理解を深めてイスラムの暦を利用することによって、ハラール市場を最大限に活用することができるだろう。

ハラール市場が羊肉業者に与えている可能性は非常に大きい。AHDB(英国農業園芸開発公社)の牛肉羊肉部会は、業界関係者が市場を最大限に活用できるよう、さまざまな対策を採っている。

またその他にもハラール市場向けには羊肉のカッティング方法を示したガイドやポスターなどを研修用に作成したり、統一基準についての情報を提供するようにしている。一例として、イギリス国内の主要統計情報や輸出市場における可能性などを示したハラール肉についてのファクトブックも作成している。

Global Meat News