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マレーシア国際ハラル展示会“MIHAS2019”で知る、これからのニッポン

ジェトロクアラルンプール事務所がジャパン・パビリオンを初設置
ジェトロクアラルンプール事務所がジャパン・パビリオンを初設置

4月3日~6日かけて開催されたマレーシア国際ハラル展示会“MIHAS2019”(会場:マレーシア国際貿易展示場)では、関係者、来場者らが口々に日本への高い期待を口にした。統計データによると、マレーシアにとって日本は、ハラル製品輸出先として4番目に大きな市場とされている(2016,2017年)。

「展示会開催に先駆けた2月、ノースポート・マレーシア(マレーシア港湾運営会社)は、ニチレイロジグループおよび双日マレーシアと、日本に向けたハラル物流の促進に向け覚書を締結した」と、ノースポートCEO アズマン・シャー・モハド・ユソフ氏は会見で述べた。昨年11月に日本の経済産業省とマレーシア起業家育成省が締結したハラル協力に関する覚書を受けたもので、これにより、東京オリンピック・パラリンピックを控え、訪日外国人観光客の増加により需要の高まるハラル商品に関し、マレーシアから日本への物流面が一歩前進したこととなる。

ハラル市場が日本へ期待することとは

丸十大屋
5回目の出展となる丸十大屋は、ニーズの高まるハラル醤油を出品

日本貿易振興機構(JETRO)クアラルンプール事務所は今年初めてMIHASへ参加し、ジャパン・パビリオンを設置、5社・団体が出品した。また、6年前にハラル認証を取得し、今年で5年連続の出展を果たした丸十大屋(ハラル醤油)など、独自にブースを設けた企業を含め、日本からは合計9社がマレーシアおよび、マレーシアをハブとした第三国でのハラル市場の開拓を目指した。いずれもF&Bでの出展だ。

ホクトのシメジ/伊賀牛「忍者ビーフ」
写真左:ホクトのシメジは、マレーシアで安定の人気を誇る/写真右:三重県伊賀牛は、「忍者ビーフ」として話題となった

マレーシアでは現在、日本料理店の出店数が、マレーシア料理店を上回る勢いだ。「醤油がハラル製品であったならば、さらに日本料理店へのニーズは高まる」とマレーシア政府関係者は期待を込める。

シラジュディン・スハイミー氏
JAKIMディレクターのシラジュディン・スハイミー氏

ところで、目を向けなければならない項目は、食品・飲料だけではない。「各レストランでは、例えば、カトラリーやプレートを色分けし、白と黒はハラル用、その他の色はノンハラルとし、洗浄方法も変えるなどの対策も求められる」と、JAKIM(マレーシア政府ハラル認証機関)ディレクターのシラジュディン・スハイミー氏はアドバイスする。これはオリンピック・パラリンピックを控えた現在の日本にとって、耳を傾けるべき有意義なアドバイスだ。

台湾のコスメ商品
F&Bの次に日本が進むべきハラル製品は、コスメ(こちらは台湾のコスメ商品)

また、今後の日本のハラル市場におけるF&Bに続くターゲットとして、同氏はコスメティクス分野への進出に期待を寄せる。「高品質で知られる日本の化粧品のハラル化へのニーズは非常に高い」。続いて製薬部門、物流、さらには、イスラム教義をもっとも直接的に体現するファイナンス部門。ムスリム圏から確かな信頼を得るためには、ハラル産業分野における挑戦はまだまだ続く。

18億人のムスリム人口を満たすハラル製品の欠如

日本製品をプロモーションするJETROスタッフ
日本製品をプロモーションするJETROスタッフの面々

MATRADE CEOのワン・ラティフ・ワン・ムサ氏は、「世界市場においてハラルは必須条件ではない。しかし、大きな付加価値となる。世界のムスリム人口は18億人に上るが、この巨大人口を満たすハラル商品は、まったく不十分な状況だ」と述べる。

あるマレーシアのF&B生産者は、自社ハラル製品の品質向上と価格安定を求め、より良い設備機材や物流での必需品をMIHASで見出すべく、期間中何度も足を運んでいた。同時に自社製品の紹介をすることで、「日本市場への商品進出を打診されたところです」と笑顔を見せる。ハラルはもう既に日本市場で大きな付加価値を持ち、マーケット開拓の機動力となることを示していた。

 

ハラル市場での世界的ハブとしての役割を持つマレーシア

ムスリム圏に進出するスターバックス
ムスリム圏に進出するスターバックスは、すべてハラル認証を取得している

ところで、ムスリム圏である中東各国の商品やサービスは、当然のことながら、すべてが“ハラル”と見なされている。しかし、「ハラルが当たり前」の前提では、世界の流通が複雑化する中、どこかのステップで、“ノンハラルやハラーム(イスラム教で禁止とされるもの)”を見逃している可能性は否定できないとの見方がある。ハラル・ノンハラルの混在するマレーシアは、それゆえに商品・サービスに対して、より厳格な目を向けてきた。そのため、マレーシアが世界のハラル産業分野で果たす役割は大きいとされ、かつ、JAKIMに対する期待の高まりを受け、MIHAS開催地は「世界のハラル市場のハブ」となりつつある。

MATRADE副社長のモハド・ムスタファ・アブドゥル・アジズ氏
MATRADE副社長のモハド・ムスタファ・アブドゥル・アジズ氏

東京オリンピック・パラリンピックを控えた日本に対し、MATRADE副社長のモハド・ムスタファ・アブドゥル・アジズ氏は、「日本は大きなマーケットだ。しかし我々はマレーシアの輸出を伸ばすことのみを目指してはいない。マレーシアは日本のパートナーとして、今後のハラル分野でのサポート、コラボレーションの道を探り、一緒に歩んでいきたい」と力強く述べた。

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