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アジアがイスラム金融の未来を作り出すか? 

先月イギリスでは、イスラム地域以外では初めて政府がスクーク国債(イスラム債)を発行し、西側諸国におけるイスラム金融の中心になるという意図を明らかにした。この国債販売はムスリムだけでなく世界中の投資家から熱烈な歓迎を受け、20億ポンド以上の注文を受けるなど高い需要があることがわかった。

香港も今年中に5億ドルから10億ドル程度のスクーク債を初めて発行し、イスラム金融に乗り出す国の仲間入りをする。金融都市の香港では、今年の3月に通常の債券とイスラム債を同等に扱うための税制法案を既に可決している。

イスラム金融は広くシャリアとして知られているイスラムの教えによって規定されている。イスラム法では、ギャンブルのような投機取引は禁じられている。お金そのものに本質的な価値はなく、単なる交換手段の一つとして考えられているため、利子(リバー)から利益を得ることも禁止されている。報酬として受け取れるのは、不動産など実際の資産で商業的リスクをとって獲得したものに限られている。

スクーク債とは、投資家が資産の一部を保有し、そこから生じるリスクに持つと同時に利益を受け取るという金融認証であり、イスラム金融の中でも最も一般的な金融商品かつ最も成長著しい分野である。例えば、資産に投資する投資家がその資産の賃貸料金として報酬を受け取るというものがある。この場合、借り主は分割で資産の料金を徐々に返済していき、投資家が受け取る報酬もそれに応じて減じていく、という実質的にはローンのような形になる。

世界の人口のうちムスリムは16億人と全体の4分の1に迫っており、イスラム金融の市場規模は大きい。アーンスト・アンド・ヤングがまとめた2014年版世界イスラム銀行競争力調査(World Islamic Banking Competitiveness Report 2014)によると、イスラム銀行の資産はここ数年間、世界全体で17%の成長を見せている。

トムソン・ロイターの2013年世界のイスラム経済の現況報告書(State of the Global Islamic Economy 2013)によると、イスラム金融の資産は9850億ドル、世界の銀行資産のうち1%にも満たない。潜在的には4兆950億ドルに成長する可能性があると言う。

世界ムスリム人口の60%が住むアジアは、この急速に成長する市場の中心にある。インドネシアは世界最大のムスリム人口を抱えており、イスラム金融の最先進国マレーシアでは、2012年時点でその市場規模が412億ドルに上る。

政治的に強力な後押しがあり、投資家の数も多く、税金面にも優遇されているため、東南アジア諸国はイスラム金融のコストが比較的低くなっている。結果、東南アジアは世界で最もイスラム金融の投資が発達した地域になり、スクーク債の世界全体の発行料の60%以上を占めるに至っている。資産規模で世界最大のイスラム銀行はサウジアラビアのアル・ラジ銀行だが、マレーシアは21行と、世界最大数のイスラム銀行を国内に抱えている。

今月に入って国内のイスラム銀行大手三社が合併交渉を始めており、これが成功すれば従来の西側金融機関の資産規模を脅かすような巨大イスラム銀行が誕生することになるだろうというアナリストもいる。

現在のところ、スクーク債市場はHSBCやスタンダードチャータードなど世界的な銀行がイスラム向け窓口から発行するのが大半だ。限定的な地域で活動するイスラム銀行は、大手銀行が利用できるようなコスト効率や世界的なネットワークに対抗しようと苦心している状態だ。今回の合併が成功すればCIMB、RHBキャピタル、MBSBの保有する合計資産は1880億ドルに達し、ASEAN地域において第四位の銀行になる。一部アナリストは、国境を超えたイスラム金融取引を実現すれば、マレーシアのイスラム金融モデルが国際化していくことにつながるだろうと話す。

イスラム金融市場の可能性は無限である。アーンスト・アンド・ヤングのアナリストによると、世界中で急速に発展する市場トップ25のうち10の国は多くのムスリム人口を抱えている。2億5千万人の人口を持つインドネシアでは、2011年から2015年の間でイスラム金融が5倍に拡大するだろうと予測されており、イスラム金融にとって有力市場になると見られている。マレーシアではイスラム金融が2020年までに金融市場全体の40%を占めるようになると予測されている。

中国本土と中東をつなぐことで国際的な金融センターになろうと目論む香港は、9月に初めてのスクーク国債発行を準備している。中国の人民元建て債券(点心債)が拡大する中、香港は大きな成長の可能性を持つイスラム金融と人民元をつなげる窓口として理想的な場所に位置している。

2008年に起きた世界的な金融危機以来、金融業に対して倫理観を持つことを求める声が高まっており、これはイスラム金融の本質とも一致しているとアナリストは見ている。世界的に見てもスクーク債の需要は供給を大きく上回っており、割のいい金融を求める投資家にとって魅力的な市場が形成されつつある。

The Amilin Post