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ハラル規準の不統一が飲食業界にもたらす問題

キャドベリー社のチョコレートに豚肉由来物質が使われているか検査をしたところ陽性という結果が出たことにより、マレーシアでは会社の評判が急速に悪化してしまった。食品業界の各社は世界中で1兆ドルに上ると言われるハラル市場に次々と参入していっているが、この市場には資金的にも宗教的にも、地雷と言える障害があるという事実が浮き彫りにされた。

ハラルとはイスラム法で認められたものを意味する。過去数年にもわたってイスラム当局がハラルの世界的なベンチマークを決めようと努めてきたが、結局何がハラルなのかという統一基準は存在しない。これはモンデリーズ・インターナショナルやネスレ、ユニリーバなどの企業にとって大きな問題の一つとなっている。

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その結果、ひとつの国の中でも複数ある基準全てに準拠するために、世界的な食品企業の生産コスト上昇要因になっている。

複数基準の調整を失敗してしまうと、一つの規準は満たしていても別の基準を満たしていない、といったリスクも出てくる。

「いくつも基準があると良くないというのは当たり前のことだ。混乱を招く」マレーシアのハラル産業開発公社CEOであるJamil Bidin氏は言う。ムスリムが過半数を占めるマレーシアでは、認証プロセスが確立され、業界も発展しているため、他のムスリム諸国はマレーシアこそがハラル食品加工の先進国であると考えられている。

イスラムでは宗教戒律を守るムスリムに対しては、アルコールや豚肉の入っていない食品や飲料、つまりハラル製品を消費することを求めている。家畜の肉がハラルと認められるためには、アッラーの名前を唱えながら屠殺しなければいけない。

2050年までにムスリム人口は10億人増えると予測されており、教育水準や収入水準も上がると見られている中、規模の大きい食品会社はハラル向けの投資の金額を増やし、経験を積み上げている。

ムスリム市場を専門とするリサーチ会社DinarStandardによると、ハラル食品・飲料の加工・生産・輸送市場は2012年の1兆ドルから2018年には1.6兆ドルに拡大するという。

しかし世界的にも地域限定的なものでも、ベンチマークが存在しないため、ムスリム観光客の増加を受けてハラル市場に乗り出そうとしている日本やオーストラリアなどでは、潜在的な成長が阻害されてしまっていると業界関係者は言う。

「ハラル認証の一貫性を高める取り組みが出てきているのは良いことだろう。わかりやすい市場を作るため、世界的な基準や国を超えた地域的な基準の設立をサポートしていきたい」と、キャドベリーの親会社モンデリーズの広報担当者は言う。

微妙な問題

マレーシアでキャドベリーが直面したように、ムスリム国にとってハラル基準というのは感情的な問題である。

キャドベリーのミルク・チョコレート内に豚のDNAを発見したことをマレーシアの厚生大臣が発表すると、複数のムスリム消費者団体はキャドベリーとモンデリーズの全商品のボイコットを呼びかけた。

インターネット上では怒りを表明する人が増え、世界最大のムスリム人口を抱えるインドネシアやイスラム誕生の国サウジアラビアでは当局による検査が何度も行われた。

しかしマレーシア唯一の公式ハラル認証機関であるイスラム案件監督庁が詳しく検査したところ、当初の検査結果とは違い、チョコレートは実際にはハラルであったことがわかったのである。

これを受け、マレーシアのイスラム学者の間では豚由来物質のゼラチンなどはハラルと見なすことができるのかについて、白熱した議論が交わされた。マレーシア生産業者連盟ハラル委員会の議長であるOthman Yusoff氏は、「このような問題がまた起きればマレーシアを始めとするハラル産業界は大きなダメージをうけるので、二度と起きないようにしたい」と話す。

国内政治と既得権益なども、問題解決の障害となっていることがすでにわかっている。

57カ国の加盟国を持ち、ムスリム世界の代表者を自認するイスラム諸国会議機構(OIC)はドバイ、トルコ、サウジアラビアの支援を受け、世界基準のハラル・ガイドラインの策定に取り組んでいる。

しかしイスラム諸国標準計量学(SMIIC)と言うこの動きには、ハラル認証の中心というべきマレーシアとインドネシアは加わっていない。ニューヨークに拠点を置くコンサルタント会社DinarStandard社CEOのRafi-uddin Shikoh氏は「複数規準の間で相互運用できるようにすること、そして透明性を確保することが重要になってくるだろう」と話す。

「スーダンから食品を輸出しようとしている企業であれば、食い込もうとしている全ての市場のハラル認証要件を知っているべきだし、簡単に満たすことができるべきだろう。」

競合関係

何が本当のハラルなのかという点は、イスラム学者の中でも大きな論点となっており、世界的な規準で合意を形成するのは困難になっている。

例えば保守的な解釈に従えば、動物をと殺する際には手に持ったナイフを利用しなければいけない。イギリスには主なハラル認証委員会が二つ有り、屠殺前に電気ショックで家畜を気絶させるかどうかについての意見が異なっている。

イスラム法の解釈が厳格なブルネイでは監査官を隣国マレーシアに派遣し、輸入品のハラル認証の信頼度を確認している。

単一規準の設定をさらに困難にしているのは、業界で主導権を握ろうとする関係が存在していることである。例えばアメリカのシリアル・メーカーケロッグ社は1億3000万ドル、ハーシー社は2億5000万ドルを投じて、それぞれマレーシアにハラル準拠の工場を建設している。

ドバイはハラル業界での収入を期待して、試験・認証センターを作っている。マレーシアとトルコはそれぞれ独自の規準をつくろうとしている。

OICとともに統一規準設立に取り組む国際ハラル品質保証連盟の局長であるDarhim Hashim氏は「今は縦割りになっている」と話す。取り組みを進めるために必要なのは、湾岸諸国とマレーシア、インドネシアが最低限度の基準について意見をまとめることだろう、と言う。

「これらの国が主要な市場であり、輸入に厳しい規制がしかれているので、他の国々はこれらの国の決定に従うだろう。」

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