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UAE:ハラル食品への需要により市場が拡大

ムスリムの数が世界中で増えている中、イスラムの基準を満たすようなハラル食品や製品を扱う企業は増えており、その市場規模は数千億ドル規模だと考えられている。ブラジルやアメリカ、オーストラリアなどイスラム教徒が多くない国でもこの市場に食い込もうとする企業は多い。

アラブ首長国連邦(UAE)はハラル市場に参入しようとする企業の入り口となることで、イスラム・ビジネスと金融の中心になることを目論んでいる。

先月UAEの首長国であるドバイはドバイ・インダストリアル・シティの中に670万平方フィートを利用して、ハラル食品、化粧品、日用品を扱う製造業者や物流業者向けの「ハラル・クラスター」を作ることを発表した。

ドバイ・インダストリアル・シティCEOのAbdullah Belhoulは、ハラル製品に対する需要は国内外で高まっており、ハラル製造業者向けの地域を作るという考えはそこから生まれたと話している。

BelhoulはAP通信に対して、「この業界が成長していることを我々は認識している」と話している。今後5年間で市場規模は倍増するという想定をもとに、「チャンスはたくさんあると考えており、これを利用していくべきだろう」と語る。

世界中には16億人前後のムスリムがいると考えられており、できるだけハラル製品を利用したい、もしくはそれが好ましいと考えるイスラム教徒が大半であろうと見られている。ハラル製品は豚肉や酒類で汚染されてはならず、家畜はイスラムのシャリア法に従って屠殺されなければいけない、というのが一般的な理解だろう。(ユダヤ教の習慣である)コーシャーと同様に、イスラムでは動物を屠殺する際、一回の動きで喉を切り命を絶つことが求められている。こうして素早く命を絶つことで、動物が感じる痛みを最小限に抑えるためである。

しかし宗教の問題で多く見られるように、何が認められるべきかについては、意見が大きく異なっている。世界ハラル食品協議会(World Halal Food Council)をはじめ国際的なイスラム組織これまでに世界で通用するガイドラインをつくろうとしたが、現在もハラル認証についての世界基準は設定できていない。

シャリアを厳格に解釈している人びとは、鶏肉をハラルと見なすためには手で屠殺する必要があると考えているが、世界中の食品業界で行われているように、機械が屠殺の作業を行ってもいいとかんがえる人々もいる。ムスリム消費者が持つさまざまな要求に応えるため、鶏が屠殺された方法をパッケージ上に表示する企業も出てきている。

UAE国内でハラル製品が生産された際には、政府の監督当局がハラル認証を与える必要はないと、Belhoul氏は話す。しかし多くの国では家畜や原料などを海外から輸入してUAEで加工されるという形態のため、ハラル製品には輸出国のイスラム当局が承認のスタンプを押す必要が出てくるのである。

ドイツのハラル・コントロール社が重要な役割を果たすのはこの点なのです、と同社統括マネージャーのMahmould Tatari氏は話す。同社が14年前にヨーロッパで始まった時は、ハラル製品に対する認知や需要は殆どなかったというが、現在Halal Control社では12人のイスラム学者を抱え、ネスレ、ユニリーバなどイスラム圏でビジネスをしたいと考える国際企業に対して、認証について指導している。

ヨーロッパで生産される製品を専門とするハラル・コントロール社では肉や家禽類に対して認証を与えないが、その他乳製品から食品類にいたるまでほとんどすべてを取り扱っているという。Tatari氏によると、世界中のムスリムがハラル認証だと思って食べている食品にも、原材料にアルコール成分が含まれていたり、キャンディやスープに豚由来のゼラチン成分が使われていたり、生産過程の途中で他の非ハラル製品と接触してしまっていることがあるという。

「まだ発展途上であり、安全にハラル食品を食べられるようになるには、まだ5年から10年は必要でしょう」と話している。

Tatari氏に限らず業界の関係者は、世界的リーダーの役割を果たしているのはマレーシアであり、ハラル産業を発展させていく上で最も厳しい基準を布いていると言う。

Oxford Business Groupによると、マレーシアは2013年に98億ドル相当のハラル製品を輸出している。57カ国が参加するイスラム協力機構のなかでも、最大規模のハラル製品生産国である。

ケロッグやハーシーなどのアメリカ企業はマレーシア国内にハラル製品向け工場を計画している。Oxford Business Groupによると、世界最大のムスリム人口を抱えるインドネシアは、2015年にハラル産業向けのセンターを設立する予定である。またタイではすでに4分の1以上の工場がハラル製品を生産している。

しかし今後数年間でハラル産業がもっとも大きく成長する可能性があるのは、食品の大半を輸入に頼っている湾岸諸国である。

ブラジルはムスリムが多く住む国に向けて肉や鶏肉を輸出しており、その規模はアメリカについで世界第二位である。世界最大の食品会社であるブラジル・フーズは6月にUAEの首都アブダビに、中東で初の生産拠点を立ち上げる計画である。この工場ではブラジルから輸入された鶏肉を加工し、再包装した上で、他の国にむけて発送されることになる。

「ここに工場を持つことで市場への距離が近くなるため、現在ブラジルから輸出できないさまざまな市場に参入できるようになるでしょう」とブラジル・フーズ社品質管理監督官のTiago Brilhante氏は話す。同社はすでに中東向けに毎月70,000トンの鶏肉を輸出しており、最大の輸出市場となっている。

市場・データ分析の情報を扱うデータモニター社は、ハラル食品は世界の食品貿易の5分の1をすでに占めており、イスラム市場は今も大きく拡大していると言う。Global Futures and Foresights Studyによると、世界中の人口は現在の70億人から2050年までに90億人に増加するが、その増加分の70%はイスラム教国で生まれるという。

マクドナルト、サブウェイ、パパジョンズ・ピザなどはムスリムの多い国ではすでにハラル食品を消費者向けに提供している。 アメリカではアイオワ州セダーラピッズに拠点を置く家族経営の企業ミダマール・コーポレーションが1974年からハラル市場に参入している。ミダマール社はアメリカ産の牛肉と鶏肉をおよそ35カ国に輸出している

Jalel Aossey氏は同社のハラル認証は氏の父親が立ち上げたアメリカ初の認証機関であるIslamic Services of Americaから受けている、と話す。

現在ではアメリカには30の認証機関が存在し、一部の大手スーパーもハラル食品を販売している。

ムスリムが主流派になっていない地域でも、ハラル産業の市場規模は数十億ドル単位にのぼることが期待されている。非営利ハラル認証団体であるIslamic Food and Nutrition Council of Americaは、アメリカ国内のハラル市場は200億ドルの規模があると話している。

世界中からドバイ・ワールド・トレード・センターに4500の食品・飲料会社を集める展示会Gulfoodでディレクターを務めるMark Napier氏によると、ハラル製品メーカーは供給が需要に追い付いていない市場に参入したいと考えているという。西側諸国に住むムスリムの多くは、ハラル製品が手に入らない場合はユダヤ教徒が口にするコーシャー製品を利用するという。

「食品業界は大きなビジネスだ。ハラルの水準や認証についての認知度がメーカーの間に広まり、輸出拡大のためにそれを強く押し出している」とNapier氏は語る。

Associated Press via Washington Post