ハラル・アラカルト
Shazia SaleemがワシントンDCからロンドンへのフライトに乗った時、機内食にハラル食を希望していた。行きの便ではカレーが提供された。そして帰りの便でも、また同じカレーが出された。ビジネスウーマンである彼女は笑いながら話した。「ハラルという選択肢を提供してくれていることには感謝しています。でも今はもう2014年なんだし、そろそろチキン・ティッカ以外を出してくれても良さそうですよね。」
これまでイギリス人が肉などのハラル食品を求める場合、ムスリム人口の多い地域でそれを専門とした屠殺業を営む店を見つけて贔屓にすることが多かった。豚肉やアルコールを提供しないレストランを求める人たちは、カレー屋さんを選ぶことがほとんどだった。しかし若年層の嗜好が変化していることを受け、ムスリム消費者を相手とするビジネスにも変化が生じてきている。
インスタント食品市場が今成長を見せている。Saleem氏はシェパーズ・パイやスパゲッティ・ボロネーゼをハラル対応させて販売するieat Foods社を経営している。彼女のように、ムスリムでない友人たちが食べているものを食べてみたいと感じながらイギリスで生活してきた世代のムスリムの間では、このような食品の人気が大きく広がっているのである。オックスフォードシャーでオーガニック・ハラル農園を営むWillowbrookは牛肉や骨付きラム肉の肩の部分を使ったベーコンを生産している。日曜の食事(サンデーロースト)に最適である。
ハラル食品は高級志向にもなってきている。Haloodiesとは、Halal(ハラル)とFoodie(食通)を合わせた造語で、ハラル肉をきれいにパッケージ化したブランドである。ムスリムの消費者が食品の由来を気にかけるようになってきているのはいいことだろうと考えられている。Willowbrookで働くLutfi Radwan氏によると、ハラルとは儀式的な屠殺方法というだけでなく、動物が生きている間に愛護の精神を見せるという意味があるという。Saleem氏が自社の食品に対し、工場生産の肉を使わないのは、これがひとつの理由になっている。
これにはコストの問題も出てくる。ロンドン西部のレストランTheMeatCoでは、ハラルメニューと独立した食事エリアを設けているが、Tボーンステーキが50ポンドする。高級バーガー店のMeat and Shakeではノン・アルコールのTempranilloを提供するが、値段はビールと同程度である。しかしイギリスのムスリムは所得水準も上がってきている。イギリス生まれの親を少なくとも一人持ち、自身もイギリスで生まれた人の平均所得は月1219ポンドだが、これは6歳以降に移住した人の615ポンドを上回っている。また、10万人程度いると見られているイスラム改宗者は、改宗前に食べていたものと似たような食事を好む傾向がある。
大企業もこの市場の可能性を認識しつつある。中産階級に人気の高いオンライン・スーパーマーケットであるOcadoではHaloodiesの肉が販売されており、Saleem氏の食事は大きなスーパーで購入可能である。高級ハラル料理の注目度は上がっている。