オーストラリア「ハラルに対する誤解が輸出減少につながる」
パイを制作しているメーカーが、一部製品でハラル認証を取得することにしたと発表したことに対し、SNSで大きな波紋を呼んでいる。こういった製品への反対が広がることで輸出に悪影響を与えると心配する声もある。
Facebookのページを見ると、肉やソーセージが入っていないなど、消費者は製品の問題に対して苦情があるわけではないということがわかる。より問題視しているのは、ハラル製品を導入しようとしている、という点だ。
また、ハラル認証を受けたアンザックビスケット(オーストラリアなどで定番のお菓子)を販売しようとして批判にさらされているビスケット会社もある。
一部のオーストラリア食品会社からは、ハラル製品に対する反発が強まることで、輸出産業がダメージを受けるのではないかと心配する声も出てきている。
ハラル・オーストラリアは、オーストラリアに17あるハラル認証団体の一つだが、ハラルに対する誤解をとくため、ウェブサイト上に記事を掲載した。記事の中で、ハラル食品とテロリズムの関係は明確に否定している。
「この点に関する誤解は明白だ。私達も喜んで関係者や当局に協力していきたい」と、ハラル・オーストラリアのCEOであるMohammad Khan氏は言う。
「オーストラリア税務局や、連邦警察、ASIO(オーストラリア保安情報機構)など、オーストラリアにはきちんと規制当局が有り仕事をしている。もし問題があれば、我々にちゃんと通知してくるだろう。私が知るかぎり、このようなプロパガンダをしている国は他にいないし、何も生み出さない。生産的ではないし、時間とエネルギーとお金の無駄だ。」
ハラルについての多くの誤解
肉製品がハラル認証を受けるためには、屠殺の段階で厳格な規準を守らなければいけない。
批判的な人びとはハラルのプロセスが残酷だと言うが、業界関係者は通常の屠殺以上に残忍性が見られるわけではないと否定する。
Andreas Dubbs博士はBendigo’s Hazeldenesなどの鶏肉業者と取引があるオーストラリア鶏肉連盟の役員である。
「オーストラリアにおいては、ハラル向け鶏肉であっても通常と同じように電気で意識を失わせてから血が抜かれる。ハラルの鶏肉というと、動物が苦しんでいるとかんがえる人もいるようだが、屠殺の方法は全く一緒だ。実際には、屠殺のプロセスを監視しているムスリムがいるというだけだ」と言う。
彼はこれまで10年間この業界に携わって来たが、ハラルのやり方についてはほとんど変わっておらず、変わったのは人びとの見方だけだろうと言う。
「ハラルと聞くと、電気で眠らせずに鶏を殺すと考えている団体がいるようだ。そのやり方をとっている一部の国もあるからだろう。しかしオーストラリアでは、他と同様の状況と用件のもとで殺している。変えていることは何も全くない」とDubbs氏は話す。
ハラル業界関係者「輸出が落ち込む可能性も」
中東やインドネシア、マレーシア、ブルネイ、シンガポール、エジプト、カタールなどに輸出をするオーストラリアの企業にとって、ハラル認証を受けた食品は大きなビジネスである。
ハラルへの反対が強くなれば輸出産業に何が起きるのか。Khan氏は率直に語った。
「ハラル認証がなければオーストラリアは高品質な製品を海外市場に売り込むことはできなかっただろう。もしオーストラリアは基本的に反ムスリム、反ハラル、反イスラムだというメッセージを輸出相手国が感じてしまったら、他の国に乗り換えてしまうだろう。オーストラリアには全国で123の食肉処理場がある。これらの企業が輸出市場を失ってしまえば大変なことになる。」
Khan氏によると、オーストラリアにおけるハラル認証プロセスについてもうすこしハッキリとした情報を出すのがいいだろうが、ハラル・オーストラリアのように小さな組織ではなく上のほうから決めていかなければいけないと主張している。
「この問題は適切に対処できていない」とKhan氏は言う。
「政府が介入して、オーストラリアの人びとに対して誤解であることをきちんと説明すれば、それで終わりだ。国益や経済の観点から見ても健全な状態ではない。こういった恐怖感を生み出すことによって、未来の子どもたちも苦しむことになるし、誰のためにもならない。」