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【アジアの目】ハラール認証 世界標準狙うマレーシア

  いまやムスリム(イスラム教徒)を対象にしたビジネスで欠かせないハラール(ハラル)認証。日本でもハラールビジネスセミナーが花盛りだ。そうしたなか、マレーシアが日本への働きかけを強めてきた。世界中にさまざまなハラール認証があるなかで、マレーシアは10年以上前から国を挙げてハラールビジネスに取り組む。すでに世界百数十カ国で普及している自国の認証を、日本でもデファクト・スタンダード(事実上の標準)にする狙いがあるようだ。

 ◆魅力の20億人市場

 「日本では90を超えるハラール認証があると聞く。誰でも認証を発行することはできるが、問題はその認証が信頼されるかどうかだ」

 2日、東京都内のホテルで開かれた「日本ハラールセミナー2014」に合わせて行われた記者会見の席上、セミナーの主催者でマレーシアのハラール食品製造最大手、ブラヒムズ・ホールディングのイブラヒム会長はこう述べ、マレーシア・イスラム開発局(JAKIM)のハラール認証の優位性を強調した。

 マレーシア政府のハラール関連組織は、認証機関のJAKIMと、ハラールビジネスの振興を担当するハラール産業開発公社(HDC)、さらにイスラムの教えや文化などを紹介するイスラム理解研究所(IKIM)の3つがある。

 この日のセミナーにはこれら3団体の代表とともに、マレーシア政府としてハラールビジネスに本格的に取り組むことを決めたアブドラ前首相が出席し、ハラールにかけるマレーシア政府の姿勢をアピールした。

 基調演説に立ったアブドラ前首相は「現在、世界のムスリム人口は20億8000万人に達している。このままの人口増加率が続けば、2030年には3人に1人がムスリムとなる。ハラール食品やサービスへの需要も高まる。ハラールビジネスには大きな力がある」などと語り、日本の取り組みに期待を示した。

ハラールとは、イスラム法(シャリア)に基づいて「許されたもの・行為」であり、ムスリムにとっては身の回りのものや生活慣習など、すべてに関係する。その反対がハラーム(禁忌)であり、豚肉や豚由来のもの、アルコールなどで、これらのものが含まれた食品や化粧品などは一切、口にしたり、肌につけたりすることは許されない。さらに、調理場や材料を運ぶ輸送コンテナも完全に別にしなければならないなど、さまざまな規定がある。

 非イスラム教徒にとってはなかなか理解が難しいが、マレーシアは00年に「ハラール食品の製造、調整、取り扱いおよび貯蔵に関する一般的ガイドライン(MS1500)」を策定。同国のハラール認証が世界中に広がるきっかけとなった。

 さらに最近は原料のDNAレベルまで解析されるほど、厳密な取り組みが行われている。この結果、マレーシアでは先月、同国で生産したチョコレートから豚のDNAが検出されたとして大騒ぎになったほどだ。

 これについて、セミナーに出席したJAKIMハラールハブ部門のハキマ課長は、本紙の取材に「製造過程には問題がなかった。DNAがなぜ検出されたのかを調べている」と述べ、JAKIMの認証に問題はなかったと強調した。

 また、講演したHDCのジャミル最高経営責任者(CEO)は「食品の場合、多くの材料を使っている。管理システム全体をみていって初めて認証ができる。政府の管理が認証の効力を維持している」と語り、マレーシアのように国を挙げて取り組まなければ、信頼できる認証は発行できないと強調した。

 ◆インドネシアも注力

 ハラール認証をめぐっては、インドネシアも最近、力を入れているが、マレーシアのようにイスラム教を国教としていないためインドネシア政府は関与できない。このため、認証はイスラム教の聖職者組織であるインドネシア・ウラマ評議会の食品・医薬品・化粧品検査機関(LPPOM MUI)が発行している。同機関も最近、都内でセミナーを連続して開くなど、日本での“勢力拡大”を目指す。今後、インドネシアとマレーシアとの間で、日本におけるハラール認証をめぐる競争が一段と活発化しそうだ。

SankeiBiz