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シンガポールをはじめ東南アジアのムスリムに人気上昇中の旅行先、日本。現状と課題とは?

シンガポール人に人気の海外旅行先である日本。以前は日本旅行を楽しむシンガポール人の多くが中華系であったが、近年はマレー系を中心とするシンガポール人ムスリム(イスラム教徒)にも人気が拡大している。

シンガポールとマレーシアで「日本ツアーのエキスパート」として知られる旅行代理店、Apple Vacations は2009年からムスリム旅行者用の日本ツアーの企画をスタート。現在に至るまで需要は増え続けており、東京と大阪をセットにしたツアーが人気を集めていると言う。

シンガポールの旅行代理店、CTC Travelは2年前、初めて100名のムスリム旅行者による5日間の大規模な沖縄ツアーを実施した。滞在先のホテルでは、ハラル食材はもちろん、魚介や野菜などを利用した沖縄料理でもてなした。またホテル内には、イスラム教の礼拝に対応する為の礼拝室も設けた。このツアーは大好評で、その後も日本へのムスリム旅行者は増えていると言う。

一方、訪日外国人旅行者数に目を向けると、2013年は1,036万人で、2012年の836万人から200万人増えて過去最高となっている。特に注目すべき点は、円安による割安感、格安航空会社の航路拡大、急速な経済成長などの影響もあり、東南アジアからの旅行者が急増していることである。

アンケートによると、シンガポール、インドネシア、マレーシア、3ヶ国の7割以上の人が日本に好感を抱いていることがわかっており、旅行者数も多い。ムスリム人口も多いこの3ヶ国だけで昨年の訪日旅行者数が50万人を超えていることにも注目するべきであろう。現在、世界のムスリム人口は約16億人で、世界人口の4分の1を占めている。その半数以上が東南アジア諸国の国民なのである。

日本政府は6年後までに訪日外国人旅行者数を2,500万人とすることを目指し、様々なプロモーション事業を展開しているが、この目標を達成する為には、経済成長と人口増が著しいムスリム市場、特にシンガポールなど東南アジアからの訪日旅行者を更に重要視する必要があると言えるであろう。

すでに日本に訪れる東南アジアからのムスリム旅行者は増加中であるが、迎える側である日本全体で受け入れ態勢が整っているとは、正直、言い難い状況だ。

イスラム教で飲酒は禁じられているが、日本の飲食店ではお酒を提供するお店が多く、また、お花見のとき等、公共の場所で飲酒をすることもあり、敬虔なムスリム旅行者の場合はかなり不快な思いをすることもあると聞く。観光中、1日5回ある礼拝の時間になったときにお祈りをする場所の確保が難しい等、他にも様々な問題や課題点もある。

真の観光立国となる為にも、戒律の厳しい宗教とも言われるイスラム教への理解を深め、ハラルの食事や礼拝室など、ムスリム旅行者が安心して、楽しく日本を訪れることができる環境作りを早急に進めてほしいと願っている。

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