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長野県のホテルなど、東南アジアのイスラム客に照準

 マレーシアやインドネシアなど東南アジアのイスラム圏からの観光客を受け入れるため、県内の観光関係者が対応を急いでいる。山ノ内町にはメニューを全て豚肉不使用としたレストランが登場した。礼拝に配慮するホテルも相次いでいる。訪日観光客の増加とともに長野県を訪れる外国人も増えており、受け入れ態勢の整備は急務だ。

 山ノ内町で海外誘客の支援を手がける企業、まちノベイト(山ノ内町)は、運営するレストラン「猿座カフェ」で提供する全メニューを8月から豚肉不使用に一新した。温泉につかる「スノーモンキー」で知られる地獄谷野猿公苑は外国人に人気が高い。それに近い同店は外国人の利用が多いため、東南アジアからの観光客増をにらんで先手を打った。

 もっと戒律が厳格なイスラム教徒を想定し、原材料や調理過程の基準を満たすことを示す「ハラル認証」を受けた調味料のみを使用したメニューの予約受け付けも始めた。シンガポールからの客が増える渋温泉の旅館「古久屋」も豚肉やアルコールを使わないメニューに対応している。

 中央アルプス観光(駒ケ根市)は2月から、同社が運営するホテル千畳敷の宿泊者に、礼拝時に使うメッカの方向を示すコンパスやマットの貸し出しを始めた。まだ利用実績はないが、今後ムスリム向けの英語ガイドブックなどを活用し、周知を図りたい考えだ。食事についても英語で原材料を記したシールによる表示を始めた。

 白馬サンバレーホテル(白馬村)も2012年から客室の一室を礼拝用に開放している。天井に貼られたシールの示すメッカの方向に向かって礼拝ができる。坂本守支配人は「最近はスマートフォンやタブレット端末のアプリでメッカの方向を調べ、自室で礼拝をする人も増えた」と話す。13年は約50人のムスリム観光客が宿泊した。

 白馬五竜観光協会は村内の観光関係者向けにイスラム教の習慣を学ぶ講習会を開いており、昨冬はイスラム圏から約400人の観光客を受け入れた。

 RAKO華乃井ホテル(諏訪市)は宿泊客の希望に応じ、豚肉を抜いたメニューなどの提供を11年から始めた。バイキング形式の朝食では、イスラム教徒の宿泊時に限り原材料を明記している。

日本経済新聞