「ハラル」学びムスリムおもてなし 静岡
全世界で16億人と世界的に人口が増加傾向のイスラム教徒(ムスリム)の旅行者を県内で「おもてなし」するため、県は18日、イスラム法で禁じられている食材や食品加工などについて学ぶ「ハラール食品研修会」を静岡市葵区で開いた。県立大の富沢寿勇(ひさお)教授が、イスラム教の基礎知識や「ハラル」(イスラム法で許されたムスリムの食品や身の回りのもの)などについて解説。観光業や農業、食品加工業者ら約200人が耳を傾けた。
ハラル産業の概要を解説した富沢教授は、県立大学の学食にハラル対応の食材を使った「ムスリムフレンドリー食」を提供するなど、文化人類学の視点から現代ハラル産業を研究している。
研修会で富沢教授は、2009年時点で「全世界のムスリム人口の約62%に当たる約10億人がアジア太平洋地域に在住している」と指摘し、県内の観光産業活性化のために、アジア地域のムスリムを呼び込むことの重要性を強調した。
また、イスラム教で摂取が禁じられている代表的なものの一つである豚は、豚肉そのものだけでなく、「肉や内臓から作られる加工食品や化粧品、薬品などもすべてが禁じられている」と話した。さらに、禁じられていない鶏肉や牛肉も、イスラム法で定められた食肉処理法に基づいていなければ、摂取が禁じられていることも説明した。
ハラル認証を受けるにはこういった厳しい戒律をクリアする必要があるが、富沢教授は、和食や日本の食品に対する関心の高まりや品質に対する信頼性の高さから、「ハラルに対応すれば、ムスリム向けの和食の食品ビジネスの期待度は高い」とした。
続いて、山梨県富士河口湖町でホテルを営み、世界最大のムスリム人口国、インドネシアからの観光誘客に向けて「ムスリム対応の和食」普及に力を入れている富士山国際観光協会の山下茂会長が、これまでの取り組みに基づいた注意点を紹介。「一般のミソやしょうゆも製造過程でアルコールを使っている」などと説明した。
こうした解説に耳を傾けていた、函南町で農産物の生産や販売業を営む中島真紀さん(47)は「野菜を作る肥料もアルコールを使っているとハラルに反することは知らなかった。東京五輪に向けてムスリムの観光客も増えてくると思う」と話した。
また、ハラル認証の支援などを行っている静岡ムスリム協会のアサディ・みわ副代表は「食事を提供する旅館などの担当者は、実際にムスリムの意見を取り入れて、食事や礼拝施設の準備を検討してもらいたい」と話していた。