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イスラム圏も神戸ビーフ味わって 専門店がハラール認証

 海外に進出中の高級和牛・神戸ビーフ。いま、世界で16億人とされるイスラム圏の人々に売り出すための取り組みが進んでいる。兵庫県の助成金で新たな処理施設が整備され、専門店では「ハラール」の認証を受けた肉の販売が始まった。

  神戸市中央区のJR元町駅近くにある神戸牛専門店「神戸元町辰(たつ)屋」。奥の専用冷凍庫から出された真空パックの神戸ビーフにハラールの認証を示す丸いシールが貼られていた。

  販売開始は1月。牛の頭をメッカの方角へ向け、まず血抜きし、イスラム教徒が祈りながら処理した。県などによると、ハラール加工された神戸ビーフの本格的な販売は初めてという。

  100グラムの値段はステーキ用のヒレ7千円、サーロイン5千円、リブロース3500円(いずれも税別)など一般の神戸ビーフの1・5倍程度。まず1頭分を在庫限りで冷凍販売してどんな部位が好まれるかなどを調べ、ホテルや国際線の機内食などへの販路拡大をめざす。辰己真一社長(57)は「イスラム教徒の観光客に食べてほしい」。

  加工したのはJA兵庫六甲などが出資する食肉加工会社「三田食肉公社」(神戸市北区)。神戸ビーフの輸出増を目指す県が昨年、4千万円を助成し、他の牛肉が混入しないように専用のカット場が整備された。国内でハラール処理の経験が豊富なイスラム教徒を雇い、昨年8月に宗教法人「イスラミックセンター・ジャパン」(東京)のハラール認証を受けた。

  他の産地もイスラム圏への進出を競っている。熊本県では昨年末、インドネシアのハラール認証を受けた食肉加工会社が県産和牛を同国へ初輸出。岐阜県は昨年、ブランド牛・飛驒牛の輸出を検討する官民合同の研究チームを作った。

  輸出には国や宗派で異なるハラール認証を得る必要があるといい、兵庫県も流通業者らへの情報提供を進める方針だ。県畜産課の担当者は「神戸ビーフは生産量が限られる。富裕層の厚いアラブ首長国連邦などへの輸出を後押しし、より高く売れる地域に販路を広げたい」と話している。(下司佳代子)

朝日新聞