ハラール認証:マレーシアの飲食店が考えていること
マレーシアがハラール業界の世界的なハブとなろうと取り組んでいる中、レストランが「pork-free(豚肉なし)」と表示することは混乱を招いているという苦情が広がっている。これを受けた当局は、ムスリムが食べても大丈夫な食品であると証明するために、認証を受けるよう国内の飲食店に促している。
Malay Mail OnlineはKlang Valley地域の飲食店経営者数人にインタビューを行ったが、ハラール認証を取得することで敬虔な信者からの売上が増加するということは認めつつも、ムスリムが経営する店であっても厳格な基準を満たすための官僚的な手続きに二の足を踏んでいる現状がわかった。
マレーシアでよく見られるママック・レストランのチェーン店をKota Damansaraで経営する店主は「ハラール認証を取得する手続きはもっと簡単にする必要があると強く感じる」と話す。
「私の経営する6つのチェーン店で申請を出したのだが、必要とされる書類を全て提出したにも関わらず、当局からは検討中であると言われた」とインド系ムスリムの店長Salemは言う。
Salemによると、認証が取得できるかどうかわかるまでに1年以上待たなければいけない店がほとんどだという。
認証にかかる時間と官僚的なやり方に嫌気がさして、インド系ムスリムの飲食店は申請を諦めることが多く、その代わりに客の信頼に頼って営業することになると言い、これを解決するためには当局が認証プロセスを簡略化する必要があると話す。
Taman Tun Dr IsmailにあるRestoran Ismailで店長を務めるMohamad Kamarul Baharinは、これまで申請をしたこともないと言う。
「店がハラール食を提供しているというのは皆すでにわかっている。それを公的機関が認めるかどうかはどうでもいい、というわけではないが、現在のシステムでは誰の得にもならないとも思う。当局にはシステムを効率的に回すための充分な人員が割り当てられていないのではないか」と話す。
Nasi Kandar Padangという店のKota Damansara店を経営するNoorul Amin Abdul Karimは結局は信頼が重要なのだと話す。
「インド系ムスリムがレストランをやっていれば、ムスリムが調理していることがわかるし、料理がハラールであるということも自明だ。認証がどこにあるのかを探す必要もない」と言う。
ハラール基準に準拠した「pork-free」の食事を出すレストランにも彼は同情的だ。ハラール認証が無いというだけでお客を失っているのだとしたら残念なことだという。
「自分が客の立場で考えた時、私は家族に対していつも新しい店を試すよう促しているのだが、レストランでアルコールが提供されていないことと、ハラール料理を出している店を選ぶことを教えている。これは個人個人の選択だ」とNoorulは言う。
Setia Alam地区に新たに二件目の店を出したShell Out Seafood Restaurantは「pork-free」で運営されているいい例で、さらに店内でのアルコール提供を禁止するという。
PRを担当するJeremy Yapによると、店はムスリム客に対し敬意を払うようにしているが、ハラール認証を受けることで生じる時間的・金銭的コストに見合うような利益は無いという。
「検討はしたが簡単ではない。規則は読んだ。ムスリムのシェフ、ムスリムの従業員、礼拝室が必須になる。簡単ではないよ。ただ、ハラール認証を持たないムスリム飲食店もあるので、問題ではないと考えている。」
「お客に対しては正直に対応している。この店はハラールなのかと聞かれることがあるが、我々の調理方法を説明し、ハラールの材料を使っているが、ハラール認証は持っていないことを伝えた上で、自分たちで判断してもらうようにしている」とYapは言う。
ムスリム客の多いTaman Tun Dr Ismail店を構えているPickle & Figの共同経営者であるPang Jia WoeiもShell Out Seafoodと同じようにハラール認証の申請を検討したことがあるという。
しかし問い合わせをした結果、巨額のコンサルタント費と官僚的な手続き嫌い、二の足を踏んだ。
「店を訪問して検査するまで何ヶ月もかかる。一番長いと6ヶ月もかかると聞いた」と言う。
また、お店に来るムスリム客から、ハラール認証が無いことに不快を示されたり問題だと指摘されることは今のところないという。
マレーシアのイスラム開発省(JAKIM)のウェブサイトのハラール認証に関する情報は、ハラール・ハブ部門に掲載されているが、チェーン店のレストランは全てのシフトにおいてフルタイムのムスリム従業員を常に二名配置しなければいけないとしている。
一店舗だけのレストランであっても、ムスリムのマレーシア市民一名をフルタイム従業員として雇い、全てのシフトで一名以上のムスリム従業員を配置しなければいけない。
これはハラール認証で必要とされている基準のごく一部である。
Kota Damansaraで「pork-free」の表示を掲げるレストラン3 Bags Fullを共同経営するYeo Kian Howeは、ハラール認証を掲げれば客が増えるであろうことを認めつつも、認証のためには従業員の再教育と雇用枠の拡大が必要になるため、認証取得は考えていないという。
「認証には大きな変更が求められる。細かいつまらない作業が発生し、申請プロセスには時間がかかりすぎる」とMalay Mail Onlineに対して語った。
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