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イスラム金融機関の名称変更とブランド再構築

イスラム金融は宗教の原則に基盤をおいた業態である。にもかかわらず、一部の銀行は「イスラム」という言葉を銀行名から外し始めた。イスラム金融が今後も成長し主流派となるためには、この名称が障害になっていたという事実を示しており、多くの人にとっては驚きだろう。

ドバイに拠点を置くヌールイスラーム銀行は1月にその名称をヌール銀行に変更した。アブダビ・イスラミック銀行(ADIB)はイスラム金融業者としてはアブダビ最大だが、海外で活動するときはアブダビ国際銀行という名称を使おうと計画している。

どちらの銀行も改名することによって、会社を拡大していくことを目的としている。宗教的な戒律に重点を置く少数の顧客だけでなく、価格やサービス品質を下に決断する顧客に照準を合わせる計画なのである。

このようなアプローチを取ることによってイスラム銀行はムスリムの多い地域だけでなく、非ムスリムを含むより大きな地域において、世界中で地位を固めることができるようになるのである。

しかしビジネス拡大のために通常の銀行と競争をするということは、イスラム色を弱める必要があると感じている。

サウジアラビアに拠点を置くイスラム開発銀行の取締役であるYerlan Baidauletは「倫理的な金融業、オルタナティブ投資、持続可能な投資など色々な呼び名で呼ぶことはできるが、この業態の魅力をより幅広い層に受け入れていただくためには、ブランドの再構築が必要になってくるでしょう」と話す。

「私達はグローバルな考え方を持ち、幅広い層の顧客にアピールする必要があります。考えを限定的にして、イスラムという呼称を使い続けるべきなのでしょうか?」

利子の支払や投機的な活動を禁止しているイスラム金融機関は過去10年、中東や東南アジアで急速な成長を遂げてきている。6カ国で構成される湾岸協力理事会(GCC)における銀行の資産規模で見ると、このような金融機関が25%を占めていることがわかる。

しかし一部の国では、成長のスピードが鈍化している。イスラム的な観点での信用度から銀行選びをする新規顧客がいなくなってきたからである。

例えばカタールではイスラム銀行の資産成長率は、これまで大きく差をつけていたにも関わらず、今では通常の銀行をわずかに上回る程度にとどまっている。中央銀行のデータによると、カタールのイスラム銀行の保有資産は2011年に35.1%成長していたが、2013年の成長率は12.2%に減少した。

拡大を継続するため、銀行には2つの選択肢が残されている。一つは消費者の数が大きい層、つまり宗教的な側面を気にせずに銀行選びをする人びとを狙うことである。このような層はムスリム国であっても60-70%はいると言われている。

ADIBはこのような層に照準を合わせようとしている。4月にはバークレイズのUAEの小売銀行業務部門を推定金額6億5000万ディルハム(1億7700万ドル)で買収することに合意した。

アブダビ銀行はおよそ11万人いるバークレイズの顧客に対し、従来的な銀行に資産を移さずにADIBにとどまるよう説得している。

イスラム銀行が成長するために考えられるもう一つの選択肢は、アジア、ヨーロッパ、アフリカなどムスリムが少数派にとどまる新市場に進出することだが、そのためにはムスリム以外の顧客を引きつける必要が出てくる。

これらの銀行はシャリアに準拠した現在の製品ラインナップを変更つもりはないが、サービス品質を無視したまま宗教問題に没頭している、という見方を変えてもらうため、名前から「イスラム」の文字を外そうというのである。

イスラム銀行はその他の銀行と比べて、金融業における道徳的な側面を強調しているという強みがある。銀行の起こした過ちが世界的な金融危機を招いたことから、このような側面が重要になってきたことがその背景にある。

ADIBがUAE、エジプト、トルコ、インドネシア、イギリスで1000人の顧客に対して実施した調査によると、道徳的な観点が欠落していることは銀行との関係において最も大きな問題になっていることが分かった。

しかしイスラム銀行も業界における成功事例と見られているわけではなく、シンプルな業務実施をしているとは考えられていない。ブランドの再構築に成功すれば、それも変わってくるのかもしれない。

Times of Malta.com