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マレーシアにおける認証制度と役割分担

マレーシアにおけるハラルへの取り組みとJAKIM

JAKIMとはJabatan Kemajuan Islam Malaysiaの略で、日本語ではマレーシア・イスラム開発省となる。これをマレーシア政府のハラル認証機関と訳す人もいるが、正しい訳とは言えないだろう。JAKIMはマレーシア国内のイスラム法整備や関連問題を全て管轄する巨大な機関であり、20以上ある部門(Hub)のうちの一つがハラル部門となっている。ハラルとは関係ない部門の方が業務としては大きいといえる。

115-IMG_3940政府機関が集中しているプトラジャヤを訪れるとわかるが、JAKIMは他の機関から独立した巨大なビルに本拠を置いている。その中でもHalal Hubは近年の認証業務拡大によってここにも収まりきらず、独立した別の建物にオフィスを構えている。事前に調べていなければ外から見てもわからないだろう。急速な業務拡大に人員整備がともなっていないと言われているが、後に説明するINHARTでコンサルタントを務めるサイフォル氏によると、それでも人員は近年倍増して現在では200人規模のスタッフがHalal Hubで働いていると言う。

JAKIMについては大きな誤解がもう一つある。企業が工場やレストランでハラル対応したいときにJAKIMに連絡すれば何とかしてくれるのではないか、という誤解だ。JAKIMのハラル部門はあくまで認証機関であり、自動車免許でいえば試験場のような存在だ。ハラルの基準を満たしていることを確認することが主な役割であり、これを手取り足取り教える教習所のように扱うのは混乱を招くおそれがある。

実際にはマレーシア国内でも役割分担があり、自動車教習所のような研修機能を担っている機関がいくつかある。その中の一つがマレーシア国際イスラム大学(IIUM)の中にあるハラル研究研修所(INHART)である。

研究機関としてのINHARTとハラル認証での役割

037-IMG_3859今回HalalJapanが訪問した際の教授陣の説明によると、INHARTは自らをハラル研究研修機関もしくはコンサルタントとして位置づけており、JAKIMとは密接な協力関係にある。バイオテクノロジーや食品工学の専門家が集まり食品分析の手法などを研究する一方で、社内認証監査官(CHIA)やハラル監査指導者研修プログラム(HLAP)などを通じて、ハラル対応に必要な研修を企業や一般向けに提供している。

もちろん主要な対象はマレーシア企業だが、海外からの問い合わせも増えている。これまでには工場などでの社内ハラル対応を学びたいという日本企業からの依頼を受け、日本まで出向いてセミナーを開いたこともあるという。研修プログラムの詳細は「ハラルをよく知るために」の第1章に説明されている。

とはいえ、ようやく整備が始まったばかりであるマレーシアの認証制度の中では、いまだに各機関の役割についての線引きが明確ではない。サイフォル氏の話によると、ハラル・ロゴの使用に対するクレームは本来JAKIMに届けられるべきだが、INHARTに所属するサイフォル氏が代わりにクレームを受理して対応することがあり、JAKIMもそれを承認していると言う。社会で求められ始めたハラル認証についての機能は巨大なため人員拡大が追いついておらず、対応出来る人が対応しているという印象だ。

大学の専門家を集めて発足したINHARTの本来的な役割は当然研究であるが、その業務は拡大しており、企業に対する啓蒙や研修に及んでいる。今回の取材では時間の都合上、他の機関にまで足を伸ばすことができなかったが、日本でハラル対応を考える企業はINHARTのような機関と協力して進めることがいいだろう。

日本におけるJAKIM

今回の取材で対応していただいたJAKIMハラル部門の国際認証担当官によると、日本国内でJAKIMの認証を受けるには2つの方法がある。一つは企業やレストランが直接JAKIMに申請するという方法だ。こちらについては資料翻訳の許可をいただいたので、金額やプロセスの参考のために別途詳しく説明したい。

もう一つは日本国内にあるJAKIM公認の認証機関に連絡することだ。現在国内の公認認証機関は日本ムスリム協会日本ハラール協会の二つであり、更に三つの機関が現在公認を求めて申請中であるという。担当官によると申請先によって差を設けているわけではないので、日本企業であれば日本にある公認認証機関に申請するのがいいだろうと話している。