ノンアルコールのビールはハラル?
ビジネスマンのRuzi Shuib氏はノンアルコールのビールを気に入ってからというものの、周りのムスリムの友人たちにも試してみるよう説得するようになったと言う。
人口がおよそ3000万人で、そのうちおよそ60%を占めるというマレーシアにおいて、この製品の可能性があると考えるのはごく自然だろう。ムスリムはイスラムの食事を制限する戒律により、アルコールを飲むことが禁止されている。
しかしマレーシアにおいてノンアルコール・ビール市場のこれまでの成長は遅い。多くの消費者は、通常のビールと同じようなボトルに入ってくるというだけで敬遠してしまうのだ。また、マレーシア当局はムスリムがこのノンアルコール製品を消費してもいいと考えている割には、いまだにハラルであるという認証を出していない。
Ruzi氏はそれでもムスリム市場の可能性に賭けている。4ヶ月前には、マレーシアの非ムスリム消費者向けに販売されてきたババリア0.0%モルト飲料の流通業者とパートナー契約を結んだ。以来、12,000ボトル、計500ケースを販売してきた。
「このような飲料のマレーシアでの成長性は高い」というRuzi氏は、特にムスリム客の多いレストランや小売店向けにモルト飲料を販売している。
ババリア0.0%の他にも、ゆっくりとマレーシアで人気を広げているノンアルコールのモルト飲料はある。例えばサウジアラビアのBarbicanやイランのIstakなどである。モルトを使わずアルコールも入っていないドイツのBitburger Drive 0.0%もマレーシアで販売されている。
クアラルンプールのPR会社で勤務するElliza Abdul Rahim氏は、ハネムーンで訪れたハワイでノンアルコール・ビールを試してみた。「そこで初めて、ノンアルコール・ビールを作っている人がいるのだということを知りました」と言うが、マレーシアにあるイラン料理店でIstakを見つけたものの、ノンアルコール・ビールをマレーシアで見つけるのは簡単でないと付け加えた。
マレーシアにおけるノンアルコール・ビール市場は2013年の時点で300万リットルであり、2008年から2013年までおよそ年4%の割合で成長している。近年はその速度が増してきており、マーケットリサーチ会社EuromonitorのアナリストAmin Alkhatib氏は、マレーシアにおけるノンアルコール・ビール市場は2016年までに360万リットルになるだろうと言う。
それでも、世界中のムスリム人口が多い地域に比べれば、マレーシアは市場として非常に小さい。
Euromonitorによると、中東やアフリカ地域では同期間でノンアルコール・ビールの売上は11.5%の割合で成長している。2013年には計14.3億リットルが同地域で販売されている。
Ruzi氏は伝統的なマレー料理のレストランよりも、中東系のレストランに販売するほうが簡単であり、顧客の40%がアラブ系であると言う。
マレーシアでノンアルコールのビールを販売する業者は、ムスリムの中でもトレンドに敏感な若者、国外で飲んだことのある旅行者、すでに人気がある国から移り住んだ人などのニッチな市場を見つけている。ネット上の広告や、店頭やムスリム向けのイベント等での露出を通じて、ムスリムであるかないかにかかわらず、モルトの味を楽しみたいけれどもアルコールは飲みたくないという人向けの市場が拡大することに期待している。
とはいえ、ハラルで認められたというスタンプなしで成功することは難しいだろう。多くのマレーシア人ムスリムは、ハラルの印がない製品は避ける傾向がある。
マレーシアでハラル認証を行う通称JAKIMは強い影響力を持っているが、ノンアルコールかどうかにかかわらず、名前にビールが入った製品の認証を行わない。
例えばA&Wは2013年からすべての店舗において、ルートビア(Root Beer)をRBと呼び始めた。コカ・コーラのマレーシア関係会社は、2009年から自社のルートビアを「A&W Sarsaparilla」と呼び始めたが、これはハラル認証の更新時に課せられた要件の一つであるとスポークスマンは話す。
マレーシアで販売されるノンアルコールのモルト飲料では、唯一Bitburger Driveのみがボトルに「ビール(beer)」の表記が刻印されているが、これによりハラル認証は自動的に却下されている。
「もしこれらの企業が認証の要件に従いハラルラベルを獲得したら、マレーシアでの売上は飛躍的に伸びるだろう」とAlkhatib氏は言う。
JAKIMによると、Ruzi氏のハラル認証申請が却下された理由は、アルコール飲料が生産されているのと同じ施設でBavaria 0.0%が生産されており、「生産プロセスはアルコール飲料と似通っている」からだという。
オランダでムスリム向け製品の承認を与えているハラル食品検査機関(Halal Feed and Food Inspection Authority)は、Bavaria NVにハラルシールを与えるに至っていないが、その理由の一つは、アルコール飲料版との唯一の違いが0.0%であるため消費者の混乱を招くおそれがあることを挙げている。
その代わりに、完全なハラル認証とは言えないが、「説明書」のようなものを出しており、Bavaria NVはノンアルコールモルト飲料の生産プロセスは、ハラルの規則に従っていることを認めている。
Ruzi氏によると、オランダの機関が証明してくれていることによって、新しい顧客の獲得につながっているという。クアラルンプールにあるGalletto’sというレストランは客の大半がムスリムだが、店外でBavaria 0.0%を宣伝してくれている。
しかしオーナーの1人であるWan Zawakhir Zin氏によると、ボトルがビールに似ているため試したくないと考える客もいると言う。
「ムスリム的な観点からいうと、中身を試さなくても、ボトルを見るだけで興味を失ってしまう」とWan Zawakhir氏は言う。
中には例外もいる。Nail Hastika Fahim氏はノンアルコールモルト飲料を試したことがあり、マレーシアのムスリムの間でも人気になるだろうと話す。
「ビールは飲めないが、これはノンアルコール飲料なので、どんな味なのかを試すことはできるでしょう」と言う。
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