シンガポール:ムスリム・ビジネスが日本市場へ
海外市場を狙うムスリム向けビジネスが進出先として日本を選ぶことはなかなかないだろう。
これまでにJapan Timesで報道してきたとおり、1億2700万の人口のうちムスリムがわずか10万人程度にとどまる日本では、イスラムを日常的に目にすることはあまり無いからだ。
しかし2020年の東京オリンピックに向けてムスリム観光客が100万人に達するだろうと考え、シンガポールのムスリム向けビジネスを展開している多くの企業も日本に対して大きな成長の可能性を感じている。
シンガポールの服飾系および飲食系企業10社が先月東京都北海道を一週間訪問し、それぞれの製品を宣伝し現地の企業と交流した。
東京で初めて開かれたムスリマ・ファッションショーでは、シンガポールでファッション・ビジネスを営む各社(Alia Anggun、Fatimah Mohsin The Wedding Gallery、Sahara Shawl、Meem Clothings、 Weddingku Galleryなど)が手掛けたデザインが多く披露された。
また、観光業界向けエクスポではサテー、ブリヤニ、ビーフ・レンダンなどの料理が振る舞われた。
シンガポールマレー商工会議所(SMCCI)が中小企業を伴い訪日した今回は、二回目の視察旅行になる。昨年行われた一回目では東京、京都、大阪を訪れている。
SMCCIでイベントや特別イベントを担当するMariam Moni副局長がThe Sunday Timesに語ったところによると、日本市場に参入した加盟企業は今のところ無いと言う。
しかし近い将来に変化が起きる可能性もある。
The Sunday Timesがインタビューした23歳から41歳のシンガポール人デザイナー5人によると、東京に住むファッションに敏感な人々は幅広い着回しをするため、ムスリマ・ファッションに対する需要にもつながる可能性があるという。
今年ユニクロがイギリス人デザイナーのハナ・タジマとタイアップしたことも、そのいい例だろう。
Sahara Shawl社のNadiah Khalid(30歳)は、日本に惹きつけられる理由として、高品質な生地と高い職人気質を挙げている。日本でブランドが成功すれば、その品質の保証にもなると話す。
Meem Clothings社のNur Hanis Rohayat(23歳)は「我々はシンガポールだけで手をこまねいているわけではなく、アジアや世界に向けて成長しようとしている、ということを人々に知ってもらいたい。シンガポールのデザイナーが世界でも通用するということがわかるだろう」と語る。
これらデザイナーたちは海外から購入ができるようなeコマースのポータルサイトを共同で立ち上げようとしていると話す。
レストランも同様にシンガポールから日本での成功を目指している。
ブリヤニで有名なShaffrons Restaurantを経営するKader Beevi Ayoob(58歳)は、日本人とイスラムとの交流が深まれば、「新しいことにオープンになり、味覚でもチャレンジするようになる」ことを期待していると話す。
現時点でシンガポール国外にフランチャイズを持たないが、日本でも実店舗を持つことが長期的な目標だという。
チャンギにHeiraz Bakeryというハラールのベーカリーを持つRoszilah Norは、日本では「ムスリムが食べることのできる場所の選択肢はまだ限られている」と感じるという。
食品流通企業のBagus Foodstuff社を創設したAbdul Kadir Abdul Hamidは、シンガポールの市場がすでに「飽和状態・縮小傾向」にある現在、シンガポールのムスリム向けビジネスにとって日本は大きなチャンスであると話す。
クレメンティの屋台から食品流通業に成長したPondok Abang社でオペレーション・マネージャーを務めるHasan Abdul Rahmanによると、会社はすでに「日本への輸入と日本からの輸出」双方について日本企業と交渉中であるという。
すでに香港、カナダ、アラブ首長国連邦でサテー製品を販売しているJumain Satayfaction社のSamsiah Sulimanにとって、日本も同様に魅力的な市場であるようだ。
SMCCIから今年を代表する女性起業家として選ばれたSamsiahは、「日本を市場として考えたことのない企業は、日本で彼らの製品が受け入れられる段階でないと考えているのだろう。しかし受け入れられるまで待っていたら、いつまでたっても実現しないのだ」と話す。