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ムスリム渡航禁止令:アメリカの損失と日本の利益

最終的な判決はまだわからないが、Hogan Gidley報道官が「テロの危険性が高い」と言うムスリム諸国観光客の入国を禁じたトランプ大統領の渡航禁止令について、アメリカの最高裁が認める見込みである。渡航禁止が合法かどうかを判断する連邦裁判所からの承認が必要とされている政策である。

今年1月に渡航禁止令が事前調整なしに施行され、空港での準備は不十分であり、9月に入ると3つ目の修正案が出されたが、この間何度も連邦判事、控訴審、司法省の間で擦った揉んだが繰り返された。最新の修正案では8カ国が対象になっており、チャド、イラン、リビヤ、ソマリア、シリア、イエメンに加えて、ベネズエラ、北朝鮮の国籍を持つ旅行者に対しそれぞれ制限を課すことになっている。

一つの扉が閉じると・・・

渡航禁止の根拠に宗教を明確に挙げているかどうかに関わらず、混乱の中にあるアメリカを訪問するムスリムは確かに減少している。「アメリカに行こうと考えていた人たちは考え直し、計画を練り直しているのは間違いない」とハラール・フレンドリー観光のコンサルティングを行うCrescent Rating を創設したFazel Bahardeen最高経営責任者は言う。ムスリム市場は「イスラムの名を借りて残虐な行為やテロを起こす一部の狂信者、麻薬中毒者、犯罪者」の行動で規定されるものではなく、消費者から見ると16億人の共通の価値観を持つ平和な共同体であるといえる。

イスラム観光企業によれば、ムスリムの学生、起業家、ビジネスマンはアメリカに歓迎されていないというメッセージをトランプの政策から感じ取っていると言う。アメリカを訪問すれば、厳しい審査にさらされるということになる。HalalTrip社によると2020年までにムスリム観光客の数は450万人、観光支出は130億ドルになると予測していたが、現在はこの数字を見直しているところだという。

 

別の扉が開く

日本のインバウンド観光の可能性を分析した日本ムスリム観光インデックス(JMTI)が発表された。このリサーチによると、日本を訪れるムスリム観光客は2004年の15万人から堅調に増加し2016年には70万人に上っている。この研究を行ったMastaercardとCrescentによると、日本を訪れるムスリム観光客は来年には100万人を超え、インバウンド観光客全体の3.5%を占めるようになるという。

ムスリム観光客増加に寄与している要因の一部は、アクセスとサービスの良さだろう。安倍総理は経済改革の一環として、大きなムスリム人口を抱えるマレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン、ベトナムの一部東南アジア諸国に対して、訪問者へのビザ制限を緩和したのである。東南アジア諸国はトランプ大統領の渡航禁止令の対象ではないとは言え、日本は「アメリカと真逆のアプローチをとっている」とHalal Media Japan創業者の横山真也氏は話す。「過去70年間日本はASEAN諸国の発展に貢献してきており、現在ではムスリム観光客や学生を受け入れるようになっている。」過去と比較しても、今はさらにその傾向が強くなっていると言えるかもしれない。

ビジネス界でのハラール認知

折しも2019年ラグビー・ワールドカップ、2020年東京オリンピックなど大きな国際イベントが計画されており、日本はムスリムのファッション、食事、祈祷などについて国内事業者向けに認知を広める研修プログラムを提供している。第3回を迎えたHalal Expo Japanには8000人が参加し、ヒジャーブ製作メーカーをフィーチャーしたモデスト・ファッションショーや調理デモンストレーションなどを楽しんだ。Bahardeen氏はこの日本の動きを歓迎し、「日本のような観光国がムスリム観光客にフレンドリーになりつつあり、東南アジアを始めとするムスリムの間での観光需要が高まりつつある」と話す。

オリンピックが開催されれば10億ドルと予測される市場を狙う飲食店をターゲットとしたハラール認証プログラムのエコシステムも整備されつつある。サウジアラビア、UAE、マレーシアなどの認証団体が日本に入って、国内向けおよび輸出向けにシャリア準拠している食品に認証を出している。

小浄設備を備えた礼拝所 

イスラムにとっては食事制限だけでなく、礼拝も教義の中心的な部分である。Pew Researchによると、ムスリムの半数以上が一日に5回以上お祈りをするというが、お祈りの前には「ウドゥ」という身体を清める儀式が必要である。日本式の洗面所にはハンドシャワーが備えられていることが多く、イスラムのニーズを満たすことができる。

日本は神道の神社や仏教の寺院が国中に広がっており信仰深い国であり、モスクも2013年に86だったが2017年には100前後に増加している。政府当局はムスリム観光客向けに、羽田、成田、関西の各空港や主要駅などの公共交通機関ハブに礼拝スペースを設置した。日本で人気のあるデパートの高島屋は買い物客向けに礼拝施設を設置するなどの取り組みを進めている。

アメリカの司法制度において渡航禁止令が認められるのは初めてだが、一度正式に認められれば前例となってしまう可能性もあるだろう。そうなったとき、可処分所得が十分にある世界中の中産ムスリム観光客を諸手を挙げて迎え入れてくれるのは日本になるだろう。

Forbes

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