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マレーシア、ハラル、JAKIM

イスラム教に触れる機会が少ない日本企業にとって、イスラム圏へ輸出をするためにハラル認証が必要と言っても、認証取得に乗り出すための心理的ハードルは高いだろう。

世界中で統一されたハラルの基準がないため、どこから手を付ければいいのかわからず、戸惑うことも多い。もともとムスリム人口がゼロに近い日本で設立されたハラル認証団体は国際認知度も皆無に等しいため、そのお墨付きを獲得したとしても、ムスリム人口の多い諸国で消費者の信頼を得ることはできない。

とはいえ、国際的なハラル認証が存在しない現時点でどうすればムスリム国へ輸出するための認知が得られるのだろうか。

その答えは目的や輸出先にもよるのだろうが、国際的なハラル認証を語る上ではマレーシアのJAKIMを外すことはできない。以下、マレーシアによるハラル認証の仕組みを簡単に説明したい。

何故マレーシアなのか

117-IMG_3942多民族国家として建国されたマレーシアは1965年にシンガポールが分離独立した後も、マレー系、中国系、インド系が国の中に存在している。宗教ではイスラム教徒が61%と多数派となっているが、この他にも仏教(20%)、儒教(1%)、ヒンドゥー教(6%)、キリスト教(9%)が今も共存する。(参考:外務省

国民の大半がイスラム教徒である場合、その国ではそもそもハラル認証は必要ない。国内で生産・消費されるものは100%ハラルであることが前提であるため、「このお菓子には豚由来の成分が使われていないだろうか」などと心配する必要が無いからである。

マレーシアのような多宗教国家ではそうはいかない。イスラム系国民がどんなに豚肉を忌み嫌っても、中華系民族の間では肉骨茶(バクテー)などの豚肉料理が生き残り、観光客に人気のある代表食にもなっている。そのような状況の中、ムスリムが安心して外で食事をすることができるようにするためにはどうすればいいのか、という需要に応えるようにして、マレーシアではハラル認証が広まっていったと言う。

ムスリム国と非ムスリム国の間での交流や輸出入が拡大していき、同時にイスラム教徒の間ではハラルに対する意識が高まっていった。食料品や化粧品などを他国から輸入する際に豚由来成分が使われていないことを確実にしたいため、マレーシアで活用されていたハラル認証が他国でも利用の幅を広げていったのである。特にマレーシアと交流の深いムスリム国ではその認知度は高くなってきている。

マレーシアのハラル認証とその有用性

マレーシアでハラル認証を取得すれば世界中すべてのムスリム国で通用するのかと言えば、現時点でその答えはノーである。中東や北アフリカに行けば、マレーシアの認証など聞いたこともないという人もいると聞く。中にはイスラム教国の「序列」や「格式」を感じているイスラム教徒もいるため、マレーシアで与えられた認証を心情的に受け付けたくないという人もいるだろう。

しかし多くの日本人の印象とは違い、世界のムスリム人口(16億人)の60%はアジア太平洋地域に集中している。中でも2億人を超えるムスリム人口を抱えるインドネシアはマレーシアの隣国であり交流も深い。ASEAN加盟国の中ではこれを見越している国も多く、タイなどは6万を超える食品の認証を申請しているという。世界共通の認証が存在しない以上、地域内で通用する認証さえ取得すれば十分意義があると考えている企業が多いのだろう。

実際に輸出に取り組む場合には、それぞれの国にあわせた対応を取る必要があるというのは当然だろう。今後の状況次第では、他国の認証制度が台頭してくる可能性もある。マレーシアの認証が消費者に受け入れられているかどうかは国によって全て異なるため、すべての市場に通用する免罪符と考えて認証申請をするのは懸命ではない。通常の製品輸出で行うように、相手国の市場調査や聞き取りによって対応を決めていく必要があるだろう。

今後数回にわたってマレーシアの現状を書いていく。

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